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月刊ヘインズ

まだまだ語れる、「コットン」の魅力! 「モノ・マガジン」出版社の編集局長にインタビュー!

早いもので、9月も終盤。まだ日中はあたたかい日もありますが、夕方には虫の音・・・秋らしくなりました。
季節の端境期ですし、そろそろ衣替えですね。快適な日常生活を過ごすために、どうぞアンダーウェアの衣替えもお忘れなく!

さて、前回の月刊ヘインズでは、皆さんにとって身近な繊維である「コットン(綿)」は、肌触りがよく、万能な天然素材でもあることをご紹介しましたが、おわかりいただけましたでしょうか?
ヘインズが出展したイベント等で、皆さんのご意見を伺ってみると、コットンが好きな方って、目をきらきらさせながら、時にはうっとりしながら、「やっぱりコットン(綿)だよなぁ~!」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃるのです。
ここまで人を惹きつけてやまないコットンの魅力、「気持ちいいから」だけでなく、もっとあるのでは?

株式会社ワールドフォトプレス編集局長土居 輝彦さん

株式会社ワールドフォトプレス編集局長
土居 輝彦さん

ということで、今回の月刊ヘインズでは、「モノ」に関してはおまかせ! のモノ情報誌「モノ・マガジン」などを世に送り出し、今年の春には「ザ・コットンカルチャースタイル」でコットンの歴史とその魅力をまとめて注目を集めた、株式会社ワールドフォトプレスの編集局長・土居 輝彦さんに、コットンの魅力を存分に語っていただきました!

どんな衣類も、まずはコットン

土居さん、本日はありがとうございます。なぜ今、コットンにフォーカスした本「ザ・コットンカルチャースタイル」を出版されたのですか?
土居さんモノ・マガジンは今年で30周年。たとえばジーンズを取り上げて特集を組もうとしたときに、ブランド切りでもスタイル切りでも、あまり変わり映えがしないので、もっと違う切り口で表現したいな、とずっと考えていたんです。
はたと「素材」から考えてみたとき、ジーンズだけでなく、Tシャツ、スニーカーにしても、元々は「コットン」。「どんな種類のコットンだったのか」など、素材について掘り下げていくのもおもしろいかもしれない、と思ったのがきっかけでした。
ザ・コットンカルチャースタイル
なるほど。確かに、いろいろな身近な衣類が、コットンでできていますよね。
土居さんそうなんです。
ところで、人間、特に日本人の五感は、延長線上に「道」があるんです。視覚は美術、聴覚は音楽、嗅覚は香道、食も、ある意味で芸術になっている。でも、意外と触覚は、芸術化された世界というものがあまりない。
もしかしたら、「肌触り」についても、もっと突き詰めれば情報として発信できるんじゃないか・・・と考えたんです。
いろいろな身近な衣類がコットンでできている。
それは興味深い! 特に日本人は手先が器用ですし、触覚にも敏感だと思うのですが、肌触りについて体系的にまとめられたものはないかもしれません。不思議ですね。
土居さん素材がいいと、やっぱりとんでもなく肌触りが気持ち良かったりする。それは芸術の域には達してないにしても、多くの人に共通する「感覚」ですよね。
素材に何を使っているかという蘊蓄よりも、どういう肌触りなのか、という感性的なことを突き詰めていくほうが、今の若い人たちが経験していないようなことをたくさん伝えられるんじゃないかと思った。
難しいことをマニアックに知っている必要はないと思うけれど、基本を知っていたほうがいいんじゃないかと思うんです。
基本ですか・・・。
土居さん今のファッションはおもしろいし、とってもおしゃれな人も本当に多い。
けれど、昔のおしゃれな人って、「いいもの」を知っていて、もっとこだわりがあったなぁ、と思う。
昔のデザイナーさんは、素材のことをよく知っていた。どのくらい弾力のある素材なのかとか、どのくらい汗を吸う素材なのか、とかいったこともわかった上で、工夫していいものをつくっていた。
伝統工芸の職人さんがいい例ですよね。
土居さん日本では世界的にも認められている方が多いですね。
実は発明や文化は寒い国から生まれているんです。寒いから工夫して生活する。蒸気機関を発明したジェームズ・ワット、電話を発明したグレアム・ベル、ペニシリンを発見したアレクサンダー・フレミング、空気入りのタイヤを発明したジョン・ボイド・ダンロップ・・・全部スコットランドの人。工夫しない生活って、どんどんダメになってしまう気がして。これからどうなってしまうのか、不安なところはありますね。
確かに・・・便利すぎると工夫を忘れてしまって、いざ不便なところに出て行くと対応できなくなってしまいそうです。
土居さん今の洋服は・・・デザイン自体は、世界に通用するくらい素晴らしいものでも、高温多湿な日本に合う衣類を考えているのか・・・ないとは言わないけれど、少ないと思う。もっと人間の根源的な部分に目を向けてこそ、発展するものなのではないかと思いますね。見た目がきれいなだけではなくて。
そういう観点から見ると、最終的にはコットンに戻るんじゃないかなぁ。見た目が良くてもおいしくないものは、飽きてしまうんだろうなぁ。昔からあるおふくろの味みたいに、やっぱりここに戻ってくる存在なんだと思うなぁ、コットンって。
深いですねぇ・・・。
土居さん肌触りって、着る喜びなんですよ。「ラク」とか「安い」とかっていう言葉が、ファッションをファストフードみたいに味気なくしてしまってる気がするんです。
何が変わってしまったのでしょうか?
土居さん現代の人たちは、「本当にいいもの」に触れる機会が少なくなってきたんでしょうね。豊かになって、生まれたときから樹脂製のものばかりに囲まれて育っていますもんね。
たとえば昔は窓のカギが真鍮でできていて、冬は夏よりも冷たくなることを経験的に知っていたし、チャンバラすれば、樫の枝がなかなか折れなくて強いのも自然とわかった。現代は、そういう「触覚」を豊かに使う機会が減っているんじゃないかなぁ。
素材経験の大切さを廃れさせずに伝えていくのも、メディアの役割なのではないかと感じています。

1970年代。ファッションの価値観が一変。経年変化するコットンに注目が集まった

一番印象深い、コットンの思い出を教えてください。
土居さん中学生くらいの頃、最初にリーバイスのジーンズを買ったなぁ。僕は佐世保で育ったから、アメリカの文化が身近にあって、街で買ったんだったなぁ。兄貴がおしゃれさんだったから、影響されて。買ったはいいけど、洗濯のしかたも知らなくて、生地がとっても固くてね。歩くと痛かったけど、うれしかったんだよなぁ。
あとは、コンバースのシューズを買ったねぇ。店員さんに、「汚れたら洗濯機で洗うんだぞ」と教えてもらったなぁ。ガツンと頭をやられたような衝撃だった。1974,5年頃かなぁ。
そして、経年変化という感覚を植え付けてくれたのがコットンだった。少しくたびれたTシャツが、使い込んだかっこよさが出て良かったんです。
アメリカの文化が一気に押し寄せた時代ですね。
土居さん70年代中盤、僕にとっては青春時代の真っただ中だったんですが、今までなかったアメリカの文化が一気に入ってきて・・・特に、やっぱり「MADE IN U.S.A catalog」は衝撃的な雑誌だったなぁ。「POPEYE」もすごく刺激的だった。何度も読んでは衝撃を受けていたよ。イーグルス、ドゥービー・ブラザーズとか、ロックの影響もあって、カリフォルニア、西海岸のムーブメントが一気に押し寄せてきたんだよなぁ。ジャクソン・ブラウンなんかのシンガーソングライター達はジーンズにタンガリーシャツやネルシャツ着て、ピースフルでラフで、自由な雰囲気だった。それに憧れたんだよなぁ。
それまでとは価値観が一変したんですね。
土居さんそう、こぎれいでモード寄りなブリティッシュスタイルが一変し、とにかくアメリカから来たものが衝撃的で、格好よくて。ストレートかブーツカットのジーンズ、コンバースのシューズ、ネルシャツ、ランチコート。マッシュルームカットにして、ヒゲ生やして。サーファーみたいだった。大人には、だらしない、ジーンズを洗え、って文句を言われたりもしたけどね。
あのラフで無骨な感じが、「若いからこそ似合う」というか、「若いマインドを持って着たい」といまだに思うんですよね。コットンのTシャツは若さ、自由の象徴だった。
特別な思いがあるんですね。
土居さんヘインズはその中でも、知る人ぞ知るブランドという感じで、ヘインズを知っている人は皆、おしゃれをわかっている人だった。Tシャツの丸首の衿が太いのが格好よくって。おしゃれな友達のお兄さんがヘインズを教えてくれたりして・・・懐かしいなぁ。本当に、今思い出してもわくわくしてくる、いい時でした。
まさに青春のひとコマを一緒に過ごしたアイテムなんですね。
土居さんそう。僕と同年代くらいの人は、きっとそういう思い出を胸に、コットンのアイテムを着ているんじゃないかなぁ。僕らにも何かやれるんじゃないかって思わせるような、そんなワクワク感にあふれていたなぁ。
僕自身、今でも思うんだけれど、ヘインズのコットン100%のパックTに袖を通す時の、ニコッとほほ笑んでしまうような特別な気持ち・・・そういう感覚を大事にしたいし、伝えていきたい。
復刻赤パック3P-Tシャツ
ありがとうございます。今もなお、パックTシャツのファンは多いのですが、より付加価値の高いものをご提供するため、当時の風合いにこだわった青パックも、MADE IN USAで復刻予定です。
土居さんうん、そういうの、いいね。応援します!
今日は本当にありがとうございました!
40年近く前のこととは思えないほど、鮮明に思い出すように語ってくださった土居さん。
この時代のことを知らない方にも、コットンという素材に込められた特別な「意味」を、少しイメージしていただけたでしょうか。
また、この時代のことを思い出すようにHanesのTシャツを着てくださっている方がたくさんいらっしゃると思うと、とても感慨深く、嬉しい限りです。
コットン

そして、国内においてコットンの良さを普及する活動に注力する、一般財団法人 日本綿業振興会事務局長の福枡 浩さんからも、コメントをいただきました!

様々な技術が発達し、機能だけでみれば、コットンを超える繊維や素材が開発されている今、なぜコットンはこのように、廃れるということもなく、愛され続けているのでしょうか?
福枡さんコットンは、着れば着るほどその良さが実感できる、人にやさしい天然繊維なのだと思います。
マイクロファイバーのような化学繊維素材のタオルは、コットンのタオルより早く水を吸うという実験データを示し、20年程前に大ヒットしましたが、現在はあまり見かけることはありません。やはりコットンが愛され続けているようです。消費者が実際に使った結果、データほどの機能性が感じられなかったのではないでしょうか。
コットンはいつごろから衣類に使われてきたのでしょうか?
福枡さんコットンの起源ははっきりしませんが、人間とコットンのつきあいは、7000年以上も前にさかのぼり、大昔からコットンは人間の生活に深く関わりを持ってきた繊維といえます。メキシコのテワカン渓谷からは、紀元前5500年の綿花が発掘されていますし、インダス河下流域で紀元前3300年~2500年頃栄えた都市モヘンジョ・ダロの遺跡から綿織物の断片が発見されています。また、ペルーでは、インカ帝国以前の古墳から、綿布に包まれたミイラが発掘されています。
コットン製品は、より肌触りの良いものや、より吸汗速乾性の高いものなど、バリエーション豊富に進化し続けています。今後、どんなコットン製品が産まれたらおもしろいと思われますか?
福枡さんコットンは、生まれながらに持つ素晴らしい機能に加えて、さらに機能の向上、新たな性能の付加、外観や風合いを良くするために必要な加工が施され、進化してきました。たとえば、しわになりやすいという欠点に対しては、形態安定加工を施し、克服しました。また、元来、水をよく吸う素材ですが、水をはじくようにする撥水加工も施すことが可能です。
たとえば今後、軽量化されたコットン製品が普及すれば、重衣料などにももっとコットンが使われるのではないかと期待しています。

福枡さん、どうもありがとうございます。さすがコットンのプロ、コットンのこと、深く知ることができました。やはりコットンの良さは、その長い歴史が確かに証明していますよね。

進化した素材の衣類も良いですが、時には是非原点に戻って、コットンのアイテムの肌触りや心地よさに、感覚を研ぎ澄ませてみてはいかがでしょうか?

次回は10月25日(木)更新です!!

Hanes 月刊ヘインズ